ガチャンちう電話が切れた音を聴きながら、ウチは受話器を置いたちうわけや。
ウチはフリーライターで、今は東京の数社の風俗雑誌出版社の記事を請け負っとるちうわけや。
アダルトリンクサイトを調べて風俗店の取材をしたり、大人のおもちゃのグッズの宣伝記事を書くのがウチの仕事だ
その中の某風俗雑誌出版社から、ある夫婦を取材して欲しいとの連絡を受けて、
今、その夫婦に取材をしてええか連絡をしたトコなの。
名前を出さないっていう条件でうまくOKをもろたわ。そろそろ行やろかきゃ。
場所が神戸やからすごく遠いわ・・・・・
ウチはボストンバッグをかかえてさっそくその夫婦のいるトコへ行こうと立ち上がったちうわけや。
ようやっと神戸駅に着くと、時刻はもう夕方の6時をまわっとったちうわけや。
待ち合わせ場所はポートピアアイランドだわ、どうやって行けばええのかしら
ウチは仕事上、大阪まではよく来とるのやけど、神戸は初めてやったちうわけや。
待ち合わせの時間は夕方の6時30分。
あと30分しやろかいわ、タクで行こうかしら、もうどうやって行けばええのか分かりまへん。
ウチが駅のタク乗り場を捜そうと歩き出すと、そこに携帯電話のベルが鳴り始めたちうわけや。
「はい、・・・もしもし?」
回りの雑音で声が聞き取りにくいので、ウチが受話器を耳に近づけると男の声が聞こえてきたちうわけや。
「もしもし・・もう神戸には着かれたんやか?」
「あ、もうかってまっか?・・・・・」
ウチは相手がどなたはんか分かると思わず頭を下げたちうわけや。
「今神戸駅に着きたんや。今そちらはポートピアアイランドやろか?」
「えええ、どエライ間に合いそうにないので今神戸駅にい まんねんわ」
「えっ・・・・ここにいらっしゃるんやろか?」
ウチが辺りを見回しとると、男の声は続いてこう聞こえてきたちうわけや。
「ええ、あんはんも神戸駅にいらっしゃるんやろか。なら今から改札の方に行きよるさかいに
改札の前で待っとっただけまっしゃろか」
「あ、はい・・で、でも・・・」
ウチが戸惑っとるうちに、男はもう電話を切ってしもたちうわけや。
ウチが分かるのかしら、写真も渡しておらへんし、会ったこともないのに。
ウチは戸惑いながらも改札へと向かったちうわけや。
改札の前では数人が同じく待ち合わせをしとったちうわけや。
ウチが分かるのかしら。こないなに人が待ってるのに・・・・・
ウチが辺りを見回しとると、1人の男が改札に近づいてきたちうわけや。
30代ぐらいの男で、サングラスをかけ、グレーのスーツ姿でどなたはんかを捜しとるちうわけや。
まさか、あの人かしら・・・・・
胸の鼓動が高鳴りながらその男を見とると、男が気付いたのかウチに近づいてきたちうわけや。
「先ほどの電話の方やろか?」
男がウチの前で立ち止まり、そう訪ねられるとウチはうなづいたちうわけや。
「は、はい・・・・あんはんが松村はんやろか?」
「はいちうわけや。それや行きまひょか。車で攻めて来よったさかい乗ってくれへんかの」
こうしてウチたちは改札前を出たちうわけや。
松村はんに連れられ、駅を出ると1台の白い乗用車が止まっとったちうわけや。
松村はんは助手席のドアを開けてウチを乗せると、ウチは車の中を見たちうわけや。
一緒にいるはずの奥はんの姿がないちうわけや。
松村はんが運転席に乗り込むと、ウチは奥はんのことを聞いたちうわけや。
「トコで、奥様は・・・・・?」
「家で待ってい まんねんわよ。一緒に来るはずやったんやけどアンタ・・・ちーとばかし急用で。
もしよろしかったら今夜は家に泊まっていってくれへんかの。長旅で疲れとるでっしゃろ」
「え・・・よろしいんやろか?ホテルはまだ予約してまへんけれど・・・・」
「ええや。妻もそのつもりで待っておるさかいに」
「すいまへん・・・」
ウチがすまなそうに頭を下げると、松村はんは微笑みを見せたちうわけや。
「えええ、せっかくここまで来てもろたんやろから、ゆっくりしてくれへんかの」
ほんでウチたちを乗せた車は、神戸駅を離れたのやったちうわけや。
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